7月の出来事 〜 ニュルンベルクでのマスタークラス


カイザーベルクからのニュルンベルクの街並

 いよいよハンブルクに冬がやってきました。
夕方4時過ぎには既に太陽は沈み、真っ暗です。
そして最近、濃い霧が街中を取り囲みどんよりとしていて、これらのせいなのか常になんだか眠い、テンションが上がりにくい日が続いています。
こんな中、街中ではいよいよクリスマスマーケットが開き始めました!
鬱気味になりやすいこの時期(こんな天気ですから、こんな気分になるのはきっと私だけではないはず・・・)ですが、このクリスマスマーケットの店頭のイルミネーションのオレンジ色のライトを見ると、心の元気が復活します。
こんな時期に7月の事を回想するのもなんですが、順を追って記録として書いておこうと思います。

7月上旬から、色々な予定で再度トロッシンゲンへ行ったり、シュトゥットゥガルトへ行ったりとバタバタしていましたが、7月下旬にニュルンベルクで開催されたマスタークラスに参加しました。このマスタークラスは前回のトロッシンゲンの時に出会ったシュトゥットゥガルト音大教授のマスタークラスでした。前回のマスタークラスで今回のマスタークラスのことを教授が教えて下さり、前回から長い期間を空けずに受講する事ができました。

今回の会場は、ニュルンベルク郊外のHenfenfeld(ヘンフェンフェルト)という街のお城で開催されました。
お城と言っても、こじんまりとした小さなお城で、今はオペラアカデミーの事務所が中にあり、アメリカ•テキサス出身のコレペティトゥーレ(オペラや歌曲のピアノ伴奏兼コーチ)の方が運営されていました。
この辺りのホテルを予約しようと思っていたのですがどこも満室だったので、ニュルンベルク中央駅近くのホテルからHenfenfeldまで毎朝電車で通いました。しかしHenfenfeldはお城と教会以外は何もないといっても過言ではないくらい、一番近いスーパーマーケットに行くにも車を走らせないと行かれない場所だったので、朝食の調達等には中央駅近くのホテル滞在は大正解でした。

Henfenfeld城

会場内のレッスン室


毎日、朝から夕方までそれぞれのレッスンが続き、お昼は教授を交えて皆でご飯を食べ、その日にお日様が出ていれば食後に外に出て日向ぼっこをして、またレッスンを再開するといった、 伸び伸びとした毎日を過ごしました。

お城で飼われていた猫。
この子に会う事も、マスタークラス期間中の楽しみの一つになっていました。


レッスンには、今回ヘンデルのオペラアリア、モーツァルトのコンサートアリア、ヴェルディのオペラアリア、R.シュトラウス、シューベルトの歌曲、と様々なジャンルの曲を用意して行きましたが、この時に私の声の調子が良かったのか、レッスンが楽しかったのが、もしくは私の声質に一番合っていたのか、特にヘンデルのオペラアリアを教授はとても気に入って下さり、来年2015年3月にシュトゥットゥガルト音大で開催されるバッハセミナーへの参加等を勧めて下さいました。とても嬉しく、是非参加したい所だったのですが、以前からその時期と丁度被って日本でのお仕事が入っていて、こちらのお仕事もとても大切なお仕事だったので、今回は見送らなければなりませんでしたが、今回のマスタークラスを受講は、私にとって大きな励みになりました。
そして教授のレッスンは前回同様、非常に的確で、他の歌手のレッスンを客観的に聴講していても、ぐんぐんと上手になっていく歌手達を見ながら、今後私自身が指導して行く立場になった時にも役立つ様なスキルをいくつも学ばせて頂きました。
そして、とにかく先生のレッスンが楽しい!と感じれば感じる程、声の出し方も変わってくるので、気持ちと身体は密接に関わっている事も改めて実感したマスタークラスでした。
マスタークラスが終わってハンブルクに帰る日は、飛行機の時間まで一緒にマスタークラスを受講していた友人とニュルンベルク観光を楽しみました。
ニュルンベルクは観光地でかなりの人で溢れていましたが、レンガ色の屋根が続く街並、受胎告知のレリーフで有名な聖ローレンツ教会、12世紀から16世紀にかけて作られたローマ皇帝の城カイザーブルク、そして美味しいニュルンベルクソーセージも堪能し、有意義な6日間でした。

Henfenfeld城の堀で飼われていた動物達・・・
・・・これは何でしょうか?
マスタークラス終了後、
ニュルンベルク中央駅行きの電車を待つHenfenfeld駅のホームから

カイザーブルク。
ここに辿り着くまでず〜っと坂道でした。


聖ローレンツ教会内部。
1270〜1477年にかけて建てられてゴシック建築の大きな教会で、
ずっしりとした石造りに息をのみました。

聖ローレンツ教会内部にかかる受胎告知のレリーフ。
ファイト・シュトス作。

聖体安置塔 。アダム・クラフト作。
天まで届く様にとの願いが込められているそうです。

聖ローレンツ教会内部のベンチの一つ。
装飾の顔がどれも表情が違ってとてもユニークでした。

ニュルンベルクソーセージ。
とても香ばしく、小さめで日本人にはちょうど良い大きさでした。

街中は観光客で溢れていました。
晴れた空にふわふわと飛んでいく大道芸人が飛ばしたシャボン玉。

ハンブルクへの帰路は “エアベルリン” でひとっ飛び!
ハンブルク空港に無事到着。
鮮やかな夕日が迎えてくれました。









6月の出来事 その② トロッシンゲンでのマスタークラス

トロッシンゲン音大の近くにいた猫

先日に引き続き、6月の出来事その②です。
空いた時間を見つけて、少しスピードアップしてブログを更新したいと思います。
私の性格上、今年あった事を書き終わらないうちに、気がついたら今年も終わっていた・・・なんて事もあり得るので・・・(笑)。

6月の中旬から下旬にかけて、Stuttgart音大の教授のマスタークラスがドイツ南部の街、トロッシンゲンであるということだったので、受講しに南まで行ってきました。
ハンブルクからICE(日本で言う新幹線)とRegional(地域に走る電車)に乗って、乗り換え含めて約9時間。詳細はICEでハンブルク駅からシュトゥットゥガルト駅まで約6時間、乗り換え時間約1時間、トロッシンゲン駅からスイスのチューリッヒ駅 行きに乗って約2時間。

もう到着する頃には、座り疲れで身体もバキバキに凝り固まっていましたが、無事に到着。
ハンブルクの都会の景色に慣れてしまっていた私を迎えてくれたのは、人数も少なく、建物も余りない、そして途中乗り換えた電車がたったの2両、という衝撃の風景でした。

それでもここトロッシンゲンには音大があり、日本人も多く在籍する学校で、何人かの日本人学生とも新しく出会う事もできました。

マスタークラス会場は駅から徒歩で約30〜40分程歩いた所にあり(車を使えば良かったのですが、知り合いの先輩もいたので、スーツケースを転がしながら田舎道を歩いて向かうことに。)、やっとの思いでたどり着いた会場は、地平線に囲まれ、近くには黒い森(Schwarzwald)もあり、兎にも角にも自然一色の場所にありました。

そのお陰で、夜空の星の多さに感激のため息をこぼしたり、マスタークラス期間中のレッスンが始まる前までの時間、知り合ったトロッシンゲン音大の日本人の人たちがわざわざマスタークラス会場まで出向いてくれ、皆で朝の清々しい空気を吸いに、黒い森まで散歩にも行きました。このお散歩ほど気持ちの良いお散歩はない、といっても過言ではない程、鳥のさえずりや、苔の生える木々の間を通り抜けながら、何回深呼吸をしたことか。
自然の癒しの力は最強でした。

さて、肝心のレッスンですが、教授のレッスンはとても明確で分かりやすく、教授自身の指導力の高さに驚きの連続でした。
今回様々な年齢の歌手が集まっていましたが、臨機応変に、今その生徒にとって一番大切な課題を見つけ出してレッスンして下さるその姿は、まさに教えるプロでした。

今回、私はメンデルスゾーン、A.ヴェーベルン、バーバー、R.シュトラウス等の歌曲を用意していきましたが、どれも丁寧に指導して下さり、先生が目の前で少しポイントになる動きをして下さると、上手に歌えるのです。。。いつも先生が目の前にいて下されば良いのに・・・と、どうしようもない事を考えながらレッスンを受けていました。

マスタークラス修了後には受講者の中で選ばれた生徒のコンサートがあり、私はメンデルスゾーンの歌曲を歌わせて頂きました。このコンサート、予定では夜の8時から始まる予定だったのですが、この日はちょうどワールドカップのドイツ対スイス戦があるとの事で、この試合開始の時間に合わせてコンサート時間が30分繰り上がって始まりました。ドイツ人のサッカー愛を垣間みた瞬間でした。演奏会後の、大きなテレビがあるロビーの盛り上がり様といったら言うまでもありません。

コンサートの時間変更がその日の朝に受付に貼り出されていました。
サッカーの時間に合わせて時間を変更する程のサッカー愛、ドイツです。

コンサートは、やはりレッスンと本番とでは当たり前ですが全く雰囲気が違うので、いつも通りに歌えない自分がいたり、自分の弱い部分、課題の部分も多く見つけましたが、終演後に先生に所に講評を頂きに行き、今後の先生のマスタークラスの予定もお聞きし、また受けよう、と決めました。

終演後にトロッシンゲン音大の日本人学生達から頂きました

マスタークラスも無事に終わり、ひょんな事から先生がシュトゥットゥガルト空港まで車で送って下さることに。車の中は一部始終緊張しっぱなしでしたが、それでも自身のレパートリーについて先生に質問させて頂いたりと最後まで有意義な時間を過ごせました。


マスタークラスの宿泊施設のお部屋から見える景色は自然一色でした

お部屋からの景色
“黒い森” の入り口



苔の生えた切り株


森の中で見つけた野バラ

森で拾った松ぼっくり
森を抜けるとどこまでも地平線が続いていました

トロッシンゲン周辺を走る2両編成の電車



5月の出来事 その③ バンドニオンコンサート

通学途中、乗り換えの駅からの景色


ハンブルクはすっかり秋も終盤を迎えています。
吹く風も冷たさを益し、コートのポケットに手を入れて歩かないといられない程です。
そして今日11月9日(このブログを更新している頃には次の日になっていると思いますが。)は、東西冷戦の象徴でもあったベルリンの壁が崩壊してからちょうど25年目という事で、今日一日色々な所でこのニュースを耳にしました。
25年というとまだとても新しい感じがします。ドイツが統一されたとはいえ、今でも東と西では、失業率などの差が浮き彫りになっているそうです。
今日、ある方から聞いたお話ですが、このベルリンの壁が崩壊したきっかけは ライプツィヒのニコライ教会の人々の “祈り” から始まったそうです。始めはニコライ教会の中だけで定期的に祈られていたそうですが、そのうちにその祈りが大きく広がって行き、ついにはベルリンの壁の崩壊にまで至ったとの事でした。
小さな一人の “祈り”  “思い” が膨らむととても大きなものになる、というとても興味深いお話でした。
そして先日、たまたまベルリンの壁に関連する動画をインターネットで見つけたので、そのリンク先を以下にご紹介したいと思います。

https://www.youtube.com/watch?v=BpAdyFdE3-c&feature=share 
 (Youtubeより)

さて、ブログも久しぶりで最近も色々な事があったので、書かなくてはいけない事が山程ありますが、徐々にアップしていこうと思っています。(少しペースを上げていかないとですね・・・汗。)
今回は前回と時期が前後してしまいますが5月のもう一つ忘れたくない思い出を書きそびれていたので、今回はこの出来事を。

5月の下旬、ガストファミリーのお父さんのアコーディオンのコンサートに出向きました。ハンブルクで開かれた大きなアコーディオン(バンドニオン)のフェスティバルだったので、大きな会場でしたが、アコーディオン、バンドニオン愛好家のハンブルガー(Hamburger: 言葉の通り、ハンブルクの人々)が大勢集まっていました。

会場の殆どが中年以上の方々で、更にアジア人らしき人は私だけ。会場に入るもかなり前の方の席に案内され、大分目立ってしまい少し緊張してしまいましたが・・・。
ガストファミリーのお父さんも真剣な表情で演奏していました。なんだか見ている私まで少し緊張でドキドキしました。
ダンス音楽も演奏され、会場の前の方は会衆がダンスが出来るスペースがあり、皆それぞれ夫婦などペアで積極的に前に出て踊っていました。
私がそれらを嬉しそうに眺めていたら、隣に座っていたおじいさんに声をかけられました。

「どこから来たの?」

「日本からです。」と答えるとおじいさんは
「そうかい!日本は私たちドイツの友達だよ。」と笑顔で話して下さいました。

“日本は私たちドイツの友達”


という言葉にとても嬉しくなりました。


「私はもう90歳になるんだ。奥さんはデンマーク人なんだけど私よりも10歳も若いから、奥さんに連れられて踊っているんだよ。彼女のお陰で若くいられるんだよ。」


と、嬉しそうに笑いながら、

「じゃ、もう一回踊ってくるね。」

と奥さんの手を取って前の方に出て行って踊っていました。


周りの踊っている人たちに比べると、ゆっくり、ゆっくり踊っていましたが、なんだかとっても心が温かくなった瞬間でした。


コンサートも終わり、

「どうぞ良い一日をお過ごし下さい!」
とおじいさんと握手をしてお別れしました。
いつまでもお元気でいてほしいな、と思うと同時に、東京と愛知にいる大好きな私の祖母達の事も思いました。


ダンスを楽しむ人々


真剣な表情で演奏するガストファミリーのお父さん


声をかけてくれたおじいさん夫婦.
幸せそうにダンスしていました。


会場で飲んだ美味しかったりんごジュース。