3月の出来事 《メサイア》


現在、ハンブルクの家のバルコニーで咲いている向日葵。

ハンブルクは短い夏があっという間に過ぎ去り、カーディガンが毎日必須になってきました。相変わらず、ハンブルクは曇りや雨の日が多いですが、時々出会う晴れ日の、日の暖かさに心がホッコリ、いつも日の光で温まっている実家の猫たちの気持ちに共感する今日この頃です。
この夏はこちらで色々な事に追われ(追い追い書いていこうと思います。)、またまたブログを放置状態にしてしまい、既に夏の終わりですが、今回は今年3月の出来事の一つを書こうと思います。

 3月20日、東京の紀尾井ホールでYMCAオラトリオソサエティ定期演奏会にヘンデル作曲のメサイアのソプラノソロとして出演させて頂きました。思い起こせばこの合唱団との出会いは学部生時代、同門の先輩からの紹介で合唱のエキストラとして歌わせて頂いた事がきっかけで、毎年お声をかけて頂くようになり、お付き合いをさせて頂いてから気がつけばかなりの年月が経ちました。指揮者の渡辺先生をはじめ合唱団員の方々には大変お世話になり、学部生だった当初はまさか自分がソリストとして歌わせて頂くなんて、遠い夢の話のように思っていました。感謝の思いと同時に、時の流れの早さをひしひしと感じました。

また紀尾井ホールは高校3年生の時に(更に遡ります!あぁ、若かりし頃・・・。)日本学生音楽コンクール受賞者コンサートで歌わせて頂いた思い出のホールでしたので、ここでもまた時の流れを実感。あの頃は音楽の道がこんなに大変な道だとは露知らず、何も考えずに伸び伸び歌っていたなと思います。(今頭の中では美空ひばりの《川の流れのように》が流れております・・・。)

演奏会当日、楽屋入りしてから数分後にコンコンとノックがあり、なんと高校の先輩が現れたではありませんか。先輩とは大学も同じで、今回オーケストラでティンパニーを叩いているとの事。その日までお互いのリハーサル時間がずれていたので、本番当日まで知りませんでしたが、嬉しい再会でした。

当日のリハーサル風景


今回のソリストの共演者も皆素晴らしい先輩方で、共演させて頂く事が出来、とても光栄でした。私なんかがここで歌わせて頂いて宜しいのでしょうか?!というプレッシャーでソワソワしていましたが、学生時代からお世話になっている合唱団と一緒に歌わせて頂く事の喜びはワクワク、大きいものでした。


まず特筆すべきは、合唱団の皆さんが全楽曲を暗譜で歌われていた事です。
合唱が歌う曲はソリストよりも多く、どれも有名で、しかも難曲ばかり。ドイツでのプロの合唱団のオーディションでも課題曲にメサイアの中から指定される程です。
楽譜を持たずに全曲を歌い切るその姿は圧巻、脱帽でした!!

またアルトのソリストの小川先生とも久しぶりにお会いし、久しぶりに声を聴いて頂き、「ドイツで良い学びをしているのね。成長していますね。」という嬉しいお言葉も頂き、これまで色々と歌の人生で悩んでいた事、更に、"必ずしも留学すれば歌が上手になるわけではない" という事を先に留学していた友人などから耳にしていたので、先生からのコメントは私を少しホッとさせて下さいました。これからも油断は禁物ですが・・・。

今回のメサイアはここだけの話、私にとってとても苦手意識の強い作品でした。
私にとって少し音域が低いということもあって、響きのポジションが取りずらく声がなかなか鳴らない、それに伴ってコロラトゥーラの部分が上手く回らず、歌えば歌うほどストレスを抱え込む、という作品でした。昔学生時代に芸大の先輩からの「なんであんなにコロラトゥーラが転がらないないんだろうね?」という一言がトラウマで、練習してもなかなかコツがつかめずに、できる事なら避けて通りたい作品でした。(聴くのは大好きなのですが。)
声も年齢も年を重ねたこともあって以前に比べれば中間音が安定し(とはいっても理想的にはまだまだですが)、その音域でもなんとか転がせるようになってきました。ここでは少し成長を実感。(こういう面では歳をとるのも悪くないですね。笑)

本番では、歌っている中で、内容が感情を伴ってスッと心から湧き出てくる、そして音楽そのものが上から降ってきて会場でその二つが一体となる、というようなそんな不思議な体験を初めてしました。技術的な面では色々と自分自身に文句を言いたい箇所は多々ありますが、それ以上に今回歌詞の内容が、勉強するたびに気持ちが新たにされ、演奏会当日は、リハーサルの時とはまた違った新しい気持ちに塗り替えられて、新鮮な気持ちで歌う事ができました。歌っている本人が一番感動していたのでは?と思います。
ただ、感情が先立って、少し体が力んでしまい声に影響を及ぼしてしまった箇所も何箇所かあったので、これは今後の課題です。
学生時代の授業で永井和子先生が、歌い手自身は気持ちばかりが舞い上がっていてはお客様に内容が届かない、いつも気持ちは冷静になって歌わなければならない、と仰っていたのを思い出しました。

オーケストラもプロの方々が集結していたので、ホールに響くその音色はうっとりするものでした。先輩のティンパニーも素晴らしく、ハレルヤコーラスと最終曲ではティンパニーの音色が光っていました。
指揮者の渡辺先生からも演奏会後に今後の勉強する上でのヒント、アドバイスを頂き大変感謝でした。

終演後、久しぶりに高校の同級生が、一人は大きなお腹を抱えて(翌月が出産予定!)楽屋に挨拶に来てくれ、更に小学校1、2年生時の大好きだった担任の先生も駆けつけてくださり、同窓会のような一日でした。
そして皆の元気な姿を拝見し、またドイツに帰って残りの留学生活も頑張ろう、と励まされた一時でもありました。

終演後に指揮者、ソリスト、チェンバロの先生方と。

心のこもった沢山の贈り物を頂きました。ありがとうございました。

♪おまけ♪
メサイア終演数日後の実家にて。
実家の愛猫ミカエル(おじいさんです)が日向で微睡んでいるところ。
日本に帰国する際の最大の楽しみの1つが、実家の猫たちに再会することです。















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